「富士山の見ゆるところにをる人はあした夕べにたのしかるべし 比庵90歳」
「絵手紙の元祖」と言われた清水比庵の遺作展が
JR本郷台駅前すぐの横浜市栄区民文化センター「リリス」のギャラリーで
明日(21日)正午までの会期で開催されています。
もう少し早くお知らせできればよかったのですが、
このところ書展の準備に追われていて、
近くで開催しているのに、
なかなか出かけられず、今日やっと行ってきました。
これから行こうという方は、
明日の午前中しかありませんが、
是非ご覧になってください。
歌人であり、画家であり、書家であった
清水比庵は、晩年「いま良寛」と呼ばれ、
豪放磊落、自然体の作風は、とても現代的。
「今 良寛といはれてわれは汗かきぬ 本良寛はゐねむりてござらう 比庵92歳」
作品を所蔵されている清水比庵の孫にあたられる方が、
栄区に在住されている経緯から、
本郷台で開催されたそうで。
会場には、思いがけず以前お世話になったY先生がいらっしゃり、
懐かしくおしゃべりをさせていただきました。
Y先生はこの比庵の作品整理を手助けされ、
この書展を主催される会の一員でいらっしゃるとのこと。
ご丁寧に説明をいただき、
そのお孫さんにも、ご挨拶をさせていただきました。
漢詩を書いて、その次に漢字かなまじり文、
あまり見ない作風だが、一つの比庵の特徴となっていて、面白い。
明治大正昭和の時代を生き、とくに高齢になってからの作品は、
若い時よりも勢いを増し、前衛の要素も加味しているように感じられる。
「毎日佳境」の有名な作品があるが、
田宮文平先生が比庵の言葉とともに
次のような紹介文を書かれておられます。
(前略)
清水比庵は歌にも書にも独特の考えの持ち主であった。
「私は歌のあるグループ(『窓日』主宰、田宮注)におりますが、
そのグループの人達に、人間は社会に奉仕しなければいかん。
奉仕のできるような人間でなければいかんと主張している。
その奉仕の一つとして顔の奉仕がある。
人間はよい顔をしておれば、それが社会への奉仕になるという主張なのです。
よい顔をしておる人が集まると、自然平和にもなる。
それから和やかにもなる。
それからまあ文化の発展をする。
人間はそれで顔が良くなければ仕事も良くいかん。
例えば書道で言いましても、顔のいい人でないと、書がうまくないと、こういう結論になります。」
そういう意味を敷衍して考えると、
この『毎日佳境』のおおらかな書は、
清水比庵翁八十五歳の顔が生み出したものと言えるのかもしれない。
古来、「書は人なり」という。
プロの技術で書く書人の作だけが、「書」ではないということでもあろう。
今回拝見した「毎日佳境」は梅の絵が添えられ、
その花ざかりで「佳境」をより強調していますね。
書23点、画21点、絵手紙20点が一同に展示。
ご覧になる方は、明日の10時~12時、急いでください