「伝 橘逸勢筆 三十帖冊子」
第30回書展 グループ墨花の作品紹介に
お付き合いいただき、有難うございます。
今回7点を出品し、本日は6番目の作品です。
グループ墨花は、例年出品作の中に一点臨書を入れるというルールがあります。
私たちが書道を学ぶ上で、最も基盤となっているのが臨書であり、
その礎の上に創作作品があると考えるからです。
今回私の臨書は、「伝 橘逸勢筆 三十帖冊子」です。
もともと三十帖冊子は、空海の作品として知られています。
空海が遣唐使として唐に渡った時、日本へ持ち帰りたいと経文を写していたが、
帰国が間近になると時間的に押し迫り、周りのお坊さんを集めて書写させた経典といわれています。
ですから、膨大な量のため全てを空海が書いたわけではなく、
同じ遣唐使として同行していた橘逸勢も空海を助けてこの一部を書いたのであろうと、
昭和になって比田井天来先生が判断したそうです。
三筆の一人の橘逸勢は、「伊都内親王願文」が有名な代表作ですが、
これも橘逸勢か定かではありません。
書体が違うので一概には言えませんが、
その強い筆力とおおらかさ、躍動感は似ているところがあります。
冒頭は小さめな文字で丁寧に書いていますが、
後半部分になるとだんだん大きくなってスケールの大きい豪快な書風へと変わっていきます。
調子よく楽しんで書いていたのでしょう。
比田井天来先生は「豪放不羈」な書であると評していますが、
果たして私にそれが臨書できたでしようか?